千夜一夜・その50まで

2009年 06月 24日
青い海 (千夜一夜・その50)
メールには「熊野までドライブ!」としか書いてない。きょうは金曜日ですよ。いったい誰と出かけるというのよ。誰と一緒であろうと僕には関係ないのだから、知りたいくせに尋ねない僕の気持ちを知っていながら、出かけちゃったみたい。意地悪だよな、気まぐれだよな、ってますますそう思うこのごろだけど、そんなあなたに付いていけないくらいがちょうどいいわ。もう、夢中になんかならないからね、と意地を張ってみて「真っ青な海を僕にも分けてくれ」とメールしておいた。どこ走ってるかな。


2009年 06月 23日
ブルー (千夜一夜・その49)
素敵な音楽を聴いて、心はとろけるような恋を夢見ていても、夢から覚めると何故か何処となく淋しい感じが襲ってくる。やっぱし、こんなときにあなたにおやすみのひとことでも言えればいいのにな、なんて思っていたのかもしれない。あじさいの紫はちょっと好きじゃない。今日はいつもよりちょこっとブルーです。そんなメールをあてどなく書いてしまう。きっと受け取ったほうも困ってしまったかもな、とか思いながら夜が更けた。あくる朝、割と早くにメールが届いたのだった。あの日は金曜日やった。


2009年 06月 22日
花を飾る (千夜一夜・その48)
僕は花を買うことなどなかった。貧しかったのが大きな理由だ。真っ赤な花を持ち帰って、部屋の片隅にちょこんと飾ることができるなら、どれほど幸せだっただろう。しかし、微かな香りを漂わすバラの花など、かび臭い独りの男の部屋には似合わないよ。花を贈りたい女の人だっていなかったし。そんな昔を思い出していると、真赤な花を君に贈れば、きっと君ならば君の素敵な部屋のどこかに僕の花を飾ってくれるだろうね。それは、窓辺の小さな花台だろうか。ダイニングのテーブルの上なのだろうか。


2009年 06月 21日
花瓶 (千夜一夜・その47)
部屋に花を生けたくて花瓶を買ったことがあります。今でも我が家のどこかの棚の中で眠っているだろうな。一輪ざしではなく、バラの花なら数本ってところがちょうどいいくらいの、やや背が高くてスリムな真っ白の洋風磁器の花瓶です。背の高い花でもオッケーです。でも、花瓶に生けるってのは難しいなあとつくづく思います。鉢に植わったサクラソウとかスミレならば、それ自体が自分から部屋になじんでくれようとしているみたいな気がするけど。まして真っ白な磁器の花瓶。君のうしろ姿みたい…。


2009年 06月 20日
赤いバラ (千夜一夜・その46)
真っ赤なバラ。あの人はこの花を「慣れない花屋に立ち往生の男性が苦し紛れに選ぶもの」と言う。なるほど、花屋の店先で一番目立っているのも赤いバラかもね。我が家の庭がある日突然とても殺風景に見えたことがあって、僕は直ぐに花屋に行ってバラの苗を買ったのですよ。昔、学生時代に講義の合間に散歩をした大学の裏手の、綺麗な洋館が立ち並んだ蔦の絡まる煉瓦塀と苔の匂いのする石段が続く坂道を下ったその一角に、そう、大通りに出る手前に小さな花屋があったんだ。「その赤い花、ください」


2009年 06月 11日
花を手に (千夜一夜・その45)
近所を散歩していたときに、真っ赤なバラが咲いているのをみつけた。そうだ、子どものころ、初夏になるとうちの庭にも次々とバラが咲いた。毎日、それを切って母は僕に持たせてくれた。教室の花瓶はいつも赤や黄色のバラで飾られ、傍に近寄るとキュンと酸っぱいような切ない匂いがした。あのころは赤いバラを何とも思わなかった。だが、人を好きになるような年ごろになり、花を見て悲しい思い出がひとつ二つと浮かぶようになると、赤い花びらが愛しく思えるようになった。花を愛する女たちに弱い。


2009年 06月 10日
月・ふたたび (千夜一夜・その44)
君と呼びかけ続けてきたが、これは恋文でも何でもないのでやめることにする。ときには君でありあなたであり、話によってはあの子でありオンナが…と書くこともあるかも知れない。さてふたたび、月が出ている。もしも、二人で海辺に腰掛けて月でも見上げながら佇むことができるならば–凄い妄想であるなと自分でも呆れるが、僕たちには恐らく何も話すことなどないだろうと思う。近ごろ感じるのは不一致なことばっかしで、じゃあ一体この子の何がいいのよと自問する。でも痺れてドキドキするんだ。


2009年 06月 09日
月 (千夜一夜・その43)
6月8日は満月だったのだろう。寝床に入って窓をあけると、心地よい風が流れ込むと同時に、まん丸の月が見えた。尾崎放哉が「こんなよい月を一人で見て寝る」と詠んでいるのをおぼろげに思い出し、真冬の月と違って屋根スレスレに昇っている夏の月が何とも控えめに感じられる。放哉は42歳で死んでしまった儚い人だが、彼は一人を如何に感じていたのだろうか。僕も今そこで月を見上げているときは一人だった。種田山頭火は「月が昇って何を待つでもなく」と詠む。彼も一人だったが、恋の歌はない。


2009年 06月 08日
1枚の写真 (千夜一夜・その42)
たった1枚だけ写真が手元にある、といってもメールのホルダーのなかである。それは何かの拍子に送ってくれたもので、お父さんと近所に山菜採りに出掛けたときのツーショットの仲良しな写真だ。JRの線路がありトンネルが背景に写っている。大きなイタドリを手に持っている。実物はとても可愛いのにこの写真のこの子はオバサンに写っている。野球帽みたいなキャップをかぶりお父さんはハンティング帽。この二人が似ているかどうかの判別はつかないが、それは二の次で、貴重な1枚の写真なんです。


2009年 06月 07日
ニャーと泣いてくれ (千夜一夜・その41)
君が猫だと気がづけば僕の気持ちからヤキモチを妬く心などは吹っ飛んでいく。君はどうぞ気まぐれにお好きなように。君の愛らしい眼差しとふかふかした顎とすらりとセクシーな尻尾を想いながら、呼んでもニャーとも言わないツンとした猫様と寄り添う夢を見続けるだろう。遠い世界の人、別の世界の人なんだと–いや猫なんだと思ってしまえばひとつの恋が終わって、僕はそれを気まぐれな夢だったと思えるさ。でも僕がニタッとした訳がもうひとつある。君が凹んだっていうからさ。じゃあ君は猫が嫌いなの?


2009年 06月 07日
ズルイ目で (千夜一夜・その40)
そしたら返事に「前に猫みたいって言われたことを思い出しヘコんじゃった。猫みたいに一瞬で懐にもぐりこんできて、かと思えばするっといなくなってしまうって」と書いてあったから、僕はうふふと笑ったよ。可笑しいからじゃない。やっぱし同じように君にジレッタイ気持ちと、おそらく相当の嫉妬心を滾らせた人がいたに違いない。ある日、君に恋した誰かは気がつくんだ。君は猫のように気まぐれで、その可愛らしさゆえに誰にでも好かれて、恋する人はそれが我慢できないけど、猫だと気づくのさ。


2009年 06月 07日
猫みたいに (千夜一夜・その39)
僕は手紙に「犬が好きですかネコが好きですかと尋ねたことがあったよね。今日はどういうわけかあなたがネコのように思えてね。憎たらしいけど可愛らしい。嫌いになりたいけど、抱っこしてしまう」と書いたんだ。君は猫のように気まぐれで、ちっとも僕の願いを聞いてくれないし、わがまま勝手でマイペースで嘯いているんだ。だから、恋心なんか寄せないぞ、好きでも嫌いでもないぞ、と考えていたことがそんな言葉になった。書きながら、君が途轍もなく遠い世界の人に思えてきて、寂しかったけど。


2009年 06月 03日
誰かが誰かを (千夜一夜・その38)
誰かが誰かを愛してる。その音楽を聴きながら綺麗な花の咲く高原へと君を乗せて車を飛ばして行きたい。愛してるなんて、まだ僕には言えない。朝のうちはどんよりとした雨模様だったのに、お昼を過ぎには雲が切れて陽が射し始めてる。窓から街を見下ろすと、ピンク色のツツジの生垣が鮮やかに目に飛び込んでくる。海もきょうは太平洋のほうまで見渡せて、神島の三角に尖った山ともくっきりとわかる。海を見ると海へ行きたくなる。でも…。海は嫌いだ。ひとりで海に行くなんて嫌だ嫌だ。寂しくなる。


2009年 05月 29日
ツーショット (千夜一夜・その37)
誰にでも愛想がよくてにこやかで明るいから好かれるのよ。だからストーカーに遭いやすいの。気をつけてね。僕も一時プチ・ストーカーになっちゃいましたが。だから僕はメールに「返事はいらんよ。好きかと聞いたら好きだとだけ言ってくれ」と書いて、今日は「そんな気障なセリフで終わらせてくれ」って締めてるのさ。でも、その後すぐに思いついて娘とのツーショットを送ったけど、君も素敵なツーショットを送り返してくれて、もう、僕はそのあとドキドキでした。傍にいる素敵な人に少し嫉妬よ。


2009年 05月 28日
めがね (千夜一夜・その36)
「きょうのあなたは一段と綺麗ですね」と、誰が言ったか。僕も真似をして、しかもそれを君に言いたいね。昨晩、夜更かしをしたのかい、彼と遊び過ぎたのか。頬紅が赤すぎない? 眼が腫れてない? そう尋ねてみたい朝がある。「頬紅のやや濃すぎても嫉妬かな」君はメガネをかけて、それも、昨日と今日は別のメガネで、銀のピアスが冴えている。ふーん、少し自分を粋がって見せて、悪い子ぶっているんかい。メガネが良く似合うの、隠せない。うつむき加減で微笑む顔が、ばら色の天使に見えてくる。


2009年 05月 28日
酸っぱうまい (千夜一夜・その35)
桑の実の酸っぱうまいか、片思い。ふとそんな句が僕の頭の中に自然に、しかもリズミカルに浮かんだ。ちょっと覚えておこうっと。酸っぱい顔が君は良く似合うよ。前にも言ったけど、ちょっとベソを掻いたような泣き顔が素敵なんだよ。ふくれっ面じゃないんだ。今、涙が乾いたばっかしっていうそういう感じさ。せっかく綺麗にお化粧もしたのに、髪だって綺麗にしたのに、泣き腫らしてしまった君の顔は子どもみたいになってしまってる。でもね、その顔が、ほんとうは可愛いのさ。酸っぱい顔なんだな。


2009年 05月 26日
ヒヨドリ(2) (千夜一夜・その34)
ヒヨドリの写真を見つけたの。身近な鳥だけど意外に近くで見ないよ。梅や桜の蕾を食べていってしまったちょっと小憎たらしい鳥だな…という印象だけど、写真で見るとシャキッとして素敵なヤツだ。僕の友達のひとりに素敵な子がいるんだ。そう!前に書いた「プチハネのベリーショートの茶色いボブ」の彼女さ。彼女は可愛いくせにちょっとボーイッシュで、そのくせ銀のピアスがよく似合う。ヒヨドリみたいなイメージをどこかに持っているかもしれない。僕は鳥のような子が好きなんだよ、きっと。


2009年 05月 26日
ヒヨドリ(1) (千夜一夜・その33)
僕は「鳥のひろちゃん」という連載を長い間書いて、それが60回を越えたところでパタッと終えてしまったわけですが、半分自伝・半分夢の物語でした。彼女は私の人生を大きく変えてしまった一人であることは間違いなく、彼女の魅力が何処にあったのかは未だ謎のままだ。一人の女を自殺未遂に、そして一人の男を粉々にしてしまった悪魔のような女だった。いいや、君とは全然関係ないことなんだけど、少し誰かに聞いて欲しくなっただけさ。その彼女が鳥のイメージなんです。ヒヨドリを見て思い出した。


2009年 05月 25日
満ち潮 (千夜一夜・その32)
ちょうど今、潮が満ちてくる時刻ですね。波打ち際に腰掛けて夕焼けに染まる山並みを背に太平洋へと続く湾を見ていたことがあるんだ。刻々と時間が過ぎるうちに僕は海に浚われてしまうような錯覚に陥る。そのうちこの波が僕たちを包んでしまう。ザザザ、ザザザと繰り返す波音を聴きながら、何も言葉を交わすことなく海を見つめて、空を見上げている。やがて、西の空の夕焼けが東の空へと移ってゆく。燃えるような鮮烈な赤色から紫がかった赤へ。今、君の家の窓からもそんな海と空が見えるのかな。


2009年 05月 24日
汗 (千夜一夜・その31)
夏はそれほど好きな季節じゃないけど、君には夏がよく似合いそうで、夏が来るのが待ち遠しい。オデコに汗を滲ませてアルプスの少女ハイジのように駆け回っている姿を思い浮かべると、小さな身体でありながらスポーツ選手のような機敏に動く姿がカッコいい。そう!ボーイッシュなシルエットに乾いた声が弾けるのが聞こえてくるようだ。きっと僕は君に声などかけられるわけもなく、遠くからじっと見つめているんだろうな。特別に何かを話しかけることもいらない。見てるだけさ。それでいいんだ。


2009年 05月 23日
次に手紙を書くときは (千夜一夜・その30)
「今だけは君に夢中にさせてくれ」別にドラマのセリフじゃないですから。いつもそんな気持ちで僕は手紙を書いている。ずーっと前からメルアドだけでも聞き出したいって思い続けていたときに、他愛ない話のついでにメルアドを知りたいと言ったら即座にオッケーしてくれて、僕のアドレスをボールペンで手の甲にメモしてくれた。ほんとうにメールくれるのかしらって心配だったよ。有頂天の僕は貰ったメールに立て続けに返事を書いてしまってゴメンなさい。メールには禁句があるんだ。告白はお預けさ。


2009年 05月 22日
ボーイッシュ (千夜一夜・その29)
また書くよ。ボーイッシュな君のこと。「プチハネのショートなボブのキミ」が好き。これはちょうどひと月ほど前に僕がノートに書いた落書きの十七音です。けっこう、イカシテル茶髪だから、その雰囲気は大好きです。全然お洒落じゃない僕でさえも、そんな跳んでる君を連れてドライブに行きたくなります。ツツジがピンクの花をいっぱい咲かせている高原で乾いた風に吹かれると、きっと君の茶色い髪がサラサラと風にふるえる。ツツジの花びらって美味しい蜜があるの知ってますか?すごく甘いんだ。


2009年 05月 21日
素敵な町 (千夜一夜・その28)
僕の高校は高台にあって市の外れにある海が見えた。遠くに浮かぶタンカーを三階の教室から眺めるのが好きで、受験が迫ったころには、理由もなく音楽室から海を見たものだ。陽炎に包まれた地上に、大型船が浮いているように見えた。君が生まれたところは港町だから、学校から坂を駆け下りれば港に行ける。田舎かもしれないけど素敵な町だよ。君は海で生まれた子なんだなと、その街を訪ねてみて初めてわかったよ。だから、海のなかにぐいぐいと潜って行くことが平気なんだね。お魚みたいですね。


2009年 05月 20日
田舎の子 (千夜一夜・その27)
あれから十日ほどが過ぎただけだ。まだ緑色をしていた麦の穂があっという間に色づき始めている。水田と隣り合わせで麦畑の穂が揺れる姿を見ると真夏の暑さを思い出す。五月も下旬になると、畦道の蛇苺や桑の実を摘んで食べたものだ。黄金色になってきた麦畑の穂をちぎって髪に差していた子もいた。君の生まれた町は山が入り江の間際まで迫り、米を作るような平野はなかった。僕は、君の都会風のお洒落な姿が好きなんだけど、君は自分で、私は田舎の子なのよ、と言う。うつむき加減が可愛い。


2009年 05月 18日
凪ぎの風景 (千夜一夜・その26)
この小さな旅で僕はひっそりと入り江に佇むことの愉しみを知った。それは感動的なものを何も求めずに特別な期待もなく吸い付けられるように入り江の淵を辿って湾の外れの小さな集落へと向かっただけなのに、そこには胸に手を当てて鼓動の音を聴くように息をこらえてじっと身体で感じ取るような驚きと感動が満ちていた。それをプレゼントしてくれた君に心から感謝したい。居間のテーブルに座ったままでテラスの窓から湾が一望できるなんて、そのときの僕の気持ちは言葉にできない。


2009年 05月 18日
火遊び (千夜一夜・その25)
或る女性に「火遊びの恋とまじめな恋の違いは?」って訊ねられたことがあるんだ。僕に火遊びなんていう言葉はないなあ。いつも真剣でまじめな恋です。でも、まじめでであればいいというものではないのよね。してはいけない恋とか絶対に実らない恋もあるのよ。そういう恋を恋と呼ぶのは辛いなあ。人を慕って想い続けてもやがて儚く忘れねばならないこともあるし、人から奪っても奪われても、それはいけないんだ。好きになるということは、そんな危険が潜むのを知らなくては。盲目はダメだ。


2009年 05月 17日
風と何処かへ (千夜一夜・その24)
風が誘ってくれたこの道を僕はひとりで駆けてみる。君が走ったその道をきょうはひとりで駆けてみる。まあ、そんな夢のようなことを考えてみても、僕は風になんかなれないんだよ。風になったら鳥になれたら、その夢が叶うときに僕は限りなく自由で、誰にも束縛されずに空を行き来できるんだろうなあ。でも、大事なことがもうひとつだけあるんだ。それは、僕が行くところに君を一緒に連れ去れるかどうかということなんだ。大事さ。君にずっと傍にいて欲しい。だから、手をつなごう。


2009年 05月 17日
風は何処かへ (千夜一夜・その23)
バイクに乗っていると君のことを忘れているよ。風を切って走っていると爽快だから、君を背中に乗せて走れれば最高だろうになあ、なんてことは考えるけどね。海が見えたら君を思い出して、そのときだけは君のこと想って風の中でいっぱいの深呼吸をするのさ。風になりたいなんて気障なことは言わないよ。さざ波の上を自由に吹き渡るのもいいけれど、目を細めて湾の入口の方角を見つめている君の傍をそよそよと吹いていたいな。僕は風だよ、風なんだ。風になって君の髪を揺するんだ。


2009年 05月 16日
ねこが好きですか?犬ですか? (千夜一夜・その22)
君のことをいち早く知ろうとすれば、例えば誕生日を聞いて星座の話や血液型の話をして、社交的やとか几帳面なタイプなんやぁーなどとワイワイとやるのがフツーなんだろうけど、僕は君にそんなことを聞く切っ掛けもなくて、いまだに年齢も正確に知らないんだ。もちろん君だって僕の事には無関心で何も知らないとは思うけど。そんななかで、一度思い切って尋ねたことがあったんだ。猫が好き?それとも犬が好き?って‥‥。昔は犬かなあー、今はちょっと猫かな、と君は言ったね。


2009年 05月 16日
お酒 (千夜一夜・その21)
お酒をやめている。といってもまだ1週間も過ぎていない。何日やめようとか、いつまでやめようというような目標はない。この前に君に会って、その日に晩酌をしたかどうか記憶さえ曖昧だが、そのころから飲むのをやめることにした。僕の場合、こうしようと決めてもとても意思が弱く、弁解・言い訳が次々と出てきて、いとも簡単に意思は崩れ去る。僕にとってはそれが当たり前のことなのだが、あることとお酒をやめてみることにチャレンジしよう思い立った。理由は至って不純なんだ。


2009年 05月 16日
縺れる 2 (千夜一夜・その20)
君のイメージを抹消するなんてできるはずもない。嫌いなところが見つかったとしても、それはドミナント・ナインス・コードのように、僕の心にすべてプラスに響いて来るんだ。嫌いなところなんてありもしない。でもね、もうメールはやめるよ。君の悲しくて忌まわしい過去の話のその1%にも満たない一部を聞いてみてわかってきたことがあるんだ。それは、君と同じ視線で同じモノを見つめてみたり感じてみたりしてみたいと僕は思っていたということ。少し近づけたからそれでいい。


2009年 05月 16日
縺れる 1 (千夜一夜・その19)
「私、彼氏からのメールでも1日1通が限度だって気づきました」とメールに書いていた君へ、この僕の縺れた心を一生懸命に解きほぐして送ろうとしても、それは間違いなく罪悪となり、世にいうストーカー行為になってしまうのだ。もがけばもがくほど、足は泥の中に沈んでゆくのだ。わかっているのに自分がコントロールできない。縺れた糸のような自分の心を見つめてみると、いったい、そこには何があるのだろう。いっそう、君のことなど嫌いになって頭の中から抹消すればいい‥‥


2009年 05月 14日
入り江  (千夜一夜・その18)
入り江という言葉を使ったけれど、実際にあそこは入り江ではなかったかもしれない。ざわめく娑婆の騒々しさから解放されてひとりでいたいと思うとき、人は入り江のような静かに閉ざされた空間に憧れるような気がする。壊れてしまったキミの心を癒し快復させるものが何か、僕にわかるならば僕は最大限にそれをキミに捧げるよ。でも、悲しきかなそれが何なのかわからない。僕は無力だ。僕はキミのところへとは戻ってはいけないのだ。痛いほど失敗を繰り返し、僕は許されていないのだ。


2009年 05月 14日
恋文 その17 「夢色」へ
恋文篇をいったん「その17」で終わることにします。それはこの恋が終わってしまったということではありません。また次のステップへと僕自身が変身していかねばならないからです。君は壊れてしまったけど必ず元に戻れる。僕も同じように壊れてしまいそうだったけど、新しい僕をめざす。君も新しい君を築き上げるためにリフレッシュして下さい。詰まらないメールはもう書かない。恋文・千夜一夜も名称を「恋文」から「夢色」へ。


2009年 05月 13日
恋文 その16 やがて
夜が明けて日が昇ったら僕は君に最後のメールを送るだろう。もう今は、がむしゃらに書く意味も必要もなくなったから。僕の心は必ず届いたと思っていいね。だから、メールはもう、書かない。君がメールで「○○さん」と僕を呼んでくれるそんな些細なことが喜びで、ひとつひとつの仕草がお気に入りです。今はしばらく会えないけれど、しっかりと記憶にとどめたから大丈夫です。僕の家から海までは遠いけれど、君を思い出すことなんて簡単さ、と強がらせておくれ、今日は。


2009年 05月 13日
恋文 その15 音楽の話をしようよ
ねえ音楽の話をしよう。ベートーベンのピアノソナタを聴いても交響曲を聴いても、チャイコフスキーでも、コンサートホールへ出かけると演奏中に必ず泣いてしまうんです。泣けてきますよ。年末の第九なんかもうボロボロと泣いてしまうので三階席の一番前でしかダメですね。あそこが僕の定位置です。ひとりで行きたいのですけど、君だったら誘ってみたいと思う。生まれてまだ誰も誘ったことなどがない僕だけど、君と音楽の話をしたいな。駅前のコーヒーショップがいいなあ。


2009年 05月 13日
恋文 その14 遠いどこかで
僕の想いが届いている確信が欲しいと思うのだろう。だから、好きだと打明けて嫌いだからと言い返されたとしても、ある意味では満足なんだ。一番悲しく辛いのは、知らん振りなんだよ。でも、僕の心が届いていることさえわかれば、君と、たとえ月まで離れてしまったとしても、僕はめげないし不安にもならない。ほんとうの友だちには手紙なんか出さなくてもずっと友だちでいれるから。僕は君にこうしてここで手紙を書いている幸せを味わうよ。でも本当は返事も欲しいし来なければ切ない。


2009年 05月 12日
恋文 その13 花屋になりたい
花屋になりたいと思っていたころがあります。若いときでした。全速力で思いきり走りきったら、そこには静けさがあるはずだ。その静寂の中でじっと僕は花を見つめていたいと夢見たのです。24歳で就職して、その職場での挨拶で「いつか、田舎に帰って花屋になりたい」と言ったのですが、仕事を転職して田舎に帰るときに同僚だった憧れのステキな女性が「田舎に行って花屋になるの」とポツンと話かけてくれたのを思い出します。天使だった。花を愛する人は無条件で大好きです。


2009年 05月 09日
恋文 その12 見つめる
君の視線を感じる。まさかその視線が僕のところで止まっていることなど絶対にないのだけれど、不思議な力を感じてしまう。まるで魔法の杖で恋の魔術をチチンプイプイとかけてしまうように、僕は君に惹かれていってしまう。そう!今ちょうどベートーベンの月光が第三楽章に入ったところさ。胸が高鳴り頭の中は真っ白になってゆく。少しうつむきかげんに何かを思案中だった君の一瞬のできごとで、過ぎゆく視線を僕は掴みたかった。


2009年 05月 06日
恋文 その11 花を生ける
小学生のころ、母はいつも僕に庭の花を切って学校に持たせてくれた。赤いバラの花束を胸に抱きかかえながら、少し恥ずかしくまたちょっと自慢な気持ちで、僕は教室にいる先生に渡したものだ。大きな花瓶に水を張り花を生けるとき、駆け足で来た自分の心臓が静かになっていくのに気づきながら、新しいときめきが身体を痺れさせているの感じた。あの日、花を生け終えたあとそっと手を添えて花を見つめていた君を、じっと柱の陰から僕は見ていた。


2009年 05月 05日
恋文 その10 淡い色
全体の雰囲気がやわらかい人だと思う。だから、真っ赤とか真っ青というような色の服ではなくピンクとかうすい水色のような服を着ていると小柄な姿によく似合うのだ。そっとそこにいる静けさがいい。でも、心のうちは激しく一本気な面もありそうで、問答をしたわけではないけれど、キッパリとしているかもね。濃い紫っぽい服を着ていたときそれがステキで淡い色が似合いますねと声掛けたら、それって私にはこの色が似合わないってこと?って言われて。


2009年 05月 02日
恋文 その9 チュニック
恋じゃないよ。くれぐれも。ショートカットが好きなのはどうやら昔からのようで、跳んでるヘアースタイルってのも好みみたい。この子は、そんなにスタイルがいいわけでもないし、背が高いわけでもない。でも、傍にいるとそこに花が咲いたような明るさと元気が滲み出て来るのです。そういうものってのはその人自身が持ち合わせる天性のようなものなのでしょう。堅苦しい職場なんですが、そんな中でチョッピリ派手だが淡い色が良く似合う。


2009年 05月 01日
恋文 その8 ボブ[2]
その髪型をボブと呼ぶって後で知ったよ。体中からチカラを吸い取るような不思議な魅力を感じさせたその子の声が透き通るようだったことと、甘えたように話す話方と、どうでもいい僕のちょっとしたデータをきちんと記憶している点などがすっかり気に入ってしまった。誰にでも好かれるステキな子だと分かっているけど、少しでも僕は話をしたいと思ったね。そしたら、この打ち明け話を聞いてくれた知人が、それは恋だなと言った。


2009年 04月 30日
恋文 その7 ボブ[1]
僕ほど服装やヘアスタイルに鈍感な奴はいないと思う。御洒落という言葉は僕の辞書にはないのだ。でも、君に出会って、茶色い髪は今風としても、そして、耳まで見えるほどに短く切ってしまった髪も珍しくはないけど。アインシュタインが難問にぶち当たって苛立ちから頭をクシャクシャにしてしまったかのように、ハネハネにした(僕は爆発したみたいなと思ったけど)髪型に出会ったとき、この子、素敵な雰囲気だなってピンときた。さらに声が可愛かった。


2009年 04月 29日
恋文 その6 Mちゃん
昔、鳥のひろちゃんという物語 を書いたけど、あのときのあの子のなまえは「M」だった。無意識と思うけどそんな音の響きが好きなんだろうと思う。チーズのチのようにイ行のときは笑顔になれる。でも、あるときに気が付いたことがあるだ。Mさんの笑顔には泣き顔が隠れているんだ。それは、自分と闘っているんだろうなって思う。本当は芯が強くて責任感のある、でもホンワカな雰囲気も持ち合わせて明るい子。蓮華の花を髪に飾りたい。


2009年 04月 29日
恋文 その5 言い出しかねて
昔、あるとき一度だけ、情熱的な恋をしたことがありました。好きになってはいけないという言葉が世の中にあったんです。でも、その人の不思議な魔力に私は惹かれていった。約束をした人の所へやがて行ってしまうのはわかっていても、どうしてもささやかな時間でいいからその人と話していたかった。恋なんだよと友人は教えてくれました。そんな恋はもうしません。だから、君が大好きだと言ってはいけなかったのです。嬉しいだけでよかったの。


2009年 04月 28日
恋文 その4 海の話
屋上から海が見えます。霞んでいても割と遠くまで見渡せる。湾の出口の島まで見えますね。大きなタンカーも浮かんでいる。そう。今日は海の話をさせてください。君の名前には海という字があって、きっと、海が大好きなんだろうと想像してます。私はバイクに乗るので、海を見に行くことが多いです。いつもひとりですけど、風に吹かれて二人で海を眺めるなんてのは夢です。いつか君の古里の海を案内してもらいたい。話題に窮すかな。


2009年 04月 28日
恋文 その3
いつか、昔、お昼休みに散歩に出かけて、海の見える秘密のその場所の話をしてくれた。そんなときでも君は泣き顔で「そうだ、君の笑顔はどんなときでも泣き顔だったんだ」と僕は気づく。ためらうように柱の影から君を追いかけた。再び君が戻ってきて、ステキな笑顔と出会えたこの一日が終わっていった夜は、ひとりでこっそりと乾杯をしたんだ。誰にも内緒にね。どうか、気障だと言ってくれ、お礼に好きだと言わせておくれ。


2009年 04月 27日
恋文 その2
僕は夢を見たようにまどろんでいる。夢の中で石畳の坂道を歩いてゆくんです。一緒に歩く君のハイヒールの足音がコツコツと響く。見晴らしのいい高台へと細い散歩道は続く。そこにはお気に入りの公園もあって、森陰からはウェディングパレスの教会の尖った屋根が見える。坂道はやがて石段になって、一番上のベンチからは海が見える。空に浮かんだようにタンカーが見えることだってあるんだ。君は古里の海を思い出すのかもしれない。


2009年 04月 26日
恋文 その1
珍しく夜更かしをしたあの深夜に、縺れる糸のその先を見つめようとしている自分に気付いたの。好きだとは絶対に言ってはいけないと硬く誓ったのに、ああ僕はなんて馬鹿なんだろうか。だから、この手紙を書き始めながら決めたんだけど、毎夜、200文字で終わらせる手紙にすることにした。さて、君にはもう会えないかも知れないとあきらめていた僕が、飄々と廊下を歩いて居る君を見て涙を滲ませてしまったのは、絶対誰にも内緒だよ。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中