酒房・あうん

「居酒屋・鶴さん」
「喫茶・コリン」
その店の話はこれまで書いてきたとおり

劇的な出会いがありました
情熱的な恋もしました
それに悲しい別れも経験しました

++

ねえ、ぼくと
ケッコンして欲しい

ダメなのわたしには
大好きな人がいるから

そんな会話があったわけではない
二人の間を 確かめようと僕はしないし
鶴さんは自分からも話しはじめようとはしなかった

月日は過ぎる
コツコツと音を立てるように刻まれてゆく時間の
その間に何度も逢う
話もしたし
お酒も飲んだ
夜の銀座を彷徨った
だが 何を話したのか 記憶にない

憶えていないって こんなことを言うのだ

多分ぼくたちは将来の夢の話をしたのだけど
大人たちが言うような記録なんか残ってない
楽し過ぎて日記にも書き留めていなかった

++

ぼくと鶴さんがケッコンしなかった訳は
誰も知らないのだけど
鶴さんとぼくは知っている

酒房・あうん

二人の間には 現実はなかった
夢しか見えてなかったのだろうか

すべては「あ・う・ん」なのだ
しゃぼんのようにふわりふわりと漂いながら
どこかに紛れて行ってしまう

その訳は誰も知らないけど
ぼくたちは知っていたのかもしれない

二人はお互いに
この国のどこかとどこかで暮らしていて
「酒房・あうん」で辛口の旨い酒を飲んだ時にだけ
幻の乾杯にこたえてくれるだろう

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居喫茶・コリン
居酒屋・鶴さん
酒房・あうん
カフェ・六角堂
古書・わはく

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