ひつじ田が露光らせて寒さなし 寒露篇 - 裏窓から

▶️ 寒露
七十二候の暦が冬の前触れみたいにヒヤッと寒さを漂わせる
早朝に駅へとゆく折にも頬を撫でてゆく引き締まった空気に真剣味を感じる

ひつじ田の朝露が水平に照らしてくる太陽光で銀色に輝いている
稲架がけが並んだ田んぼも見なくなってしまった

暑くなったり寒くなったりの日々を繰り返している
九月のような日だと思えば十一月の寒さがくる

毎年のことだが
寒露のころって誕生日が近いのでソワソワとしている

長袖にしたり半袖にしたり
いかにもぼくの性格に似ているようでもある

▶️ 京都
十月初旬になってまもないときに三日間ほど京都へ出かけていた
その帰りに寒露をの時節を迎えた

六日から七日にかけて雨が降った
横殴りになるような激しいものではないものの
静かで淑やかを装いつつ豊かな降水量を記録したのではなかろうか

三十余年ぶりにむかしの職場の同期の子と会うのだという
ツマといっしょに出かけた
会って話し込んでいる間には
秋の国宝の特別公開にでも行ってこようか
と軽く考えてていたのだが
雨降りを避けて地下街やそこに連なる大型店舗を
行ったり来たりしていた

▶️ 「壇蜜3」という日記
電車の中で日記を読むのがなかなかリラックスできる
一日分の短い日記を読み終わっては外の景色をぼんやりと眺めている
あらっと思うキーワードがあるときは付箋を貼るかメモ帖に書きとめている

「泣くなら一人で、出来事は日記に」

味なことを所々で書く人である
見たこともないし声を聞いたこともない真っ白な印象の人である
知性を見せびらかす風でもない

▶️ 日記を書く
司馬遼太郎を読んでいるときに書く日記は「街道をゆく」ふうになるし
壇蜜日記を読めば壇蜜ふうになってしまう

もちろんそれは自分がそう思っているだけで他人が読んでも似ていないのに
人というものはそういう人物や人物の生き方に知らぬ間に傾倒してゆく

▶️ 総選挙
それが正しかろうが間違っていようが
1つのことをぐいっと考え込むことは大事なことで
この十月に大騒ぎをする総選挙であっても
考えることなく送ってしまう人が多いのではないか

何でもネットなどの情報網で検索し流れるままに決定してしまう人が多い
そういう人がこれからの社会を構築してゆくといえばこの上なく儚く情けない

▶️ 不便であることを活用する
負けるとわかっていても
戦さに挑む人の心の奥深くを
一度でもはかってみる柔らかな視線が必要だろう

論座を返す
白黒を互いに入れ替える
そういうふうにじっくりと考察をして未来を設計する
考える手間や勇気や手段を失ってはいけない

何でも任せっぱなしの便利な時代である
不便であることを活用することを忘れないように心がけたい

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寒くて静かな夜明けに考える - 大寒篇 【裏窓から】

大寒を過ごしてそのあくる日・土曜日から父の命日である22日・日曜にかけてムスメとの用事を果たしに京都へと出かけた

その日の少し前14日から15日には猛烈な寒波が列島に襲いかかり至る所で大雪の記録を作っている
センター試験とバッティングして受験生のみなさんは大わらわなことになったりした
そのときに降った雪が市内の路地や道端に残っていた

積もった雪を見るのはこの冬初であったので子供のような心でちょっとした歓びも肌に感じながら洛中を横切って車折の家へと向かった

私たち夫婦は初雪を見るような驚きや自分たちの住む地が雪国でないことの有り難みを感じつつ昔住んだ京都の寒さや結婚する前年の大雪を思い出として懐かしんだ

伊勢平野は風が強烈に冷たいので伊勢たくあんなどの名産も作れます
ですが、冷たい風がきつい割には気温はそれほどまでに下がることはありません
氷も張らない日もあります

しかしながら、さすがに雪が降り積もり、近隣地域の山々に一週間以上も雪が残る日が続くとなると寒いです
空気は冷え切ってしまい、重くて大きな冷気団が体当たりをしてくるようなエネルギーを感じます

🍀

成人式のころから本格的な冬になっているわけですが、しばらく辛抱したら抜け出せる日も例外なく来ます

京都の家も朝にはしんしんと冷え込みました
その朝方に隣で寝ていた孫が早々に目を覚まし布団から這い出て来たので抜かりなく捕獲して私の布団に引き入れました
添い寝をしながらごっそりと布団を頭からかぶって指をくわえて目を閉じている赤ん坊を見ていましたら、漠然とですけれども、あることがふ〜っと思い浮かんできたのです

それは、この子の記憶はまだ真っ白なのだということです
上手に表現ができませんけれども思っていることは伝わると思います
でも、それがどうだと反問されても困りますけど

脳みその中の真っ白な記憶領域に目の前に映ることを少しずつ焼き付けている毎日が続いています
記憶する能力もまだまだ未熟です
能力を磨き上げなからそしてセンサーも上達しながら目の前に映るものの他に、味覚・聴覚・触覚から飛び込む情報を処理している
ものすごいスピードで細胞は増殖し続けているはずです

この子は暗闇の中で指をくわえながらピクピクと体を動かしつつ
脳みその中のスクリーンのうえにどんなものを思い浮かべているのでしょうか

チョコ
チョコ

生きることの神秘性を感じ
ヒトの脳の無限な凄さに驚き
心理が発達してゆくメカニズムも面白く
肉体的な成長に目を見張る

この世のあらゆるものが時々刻々と変化をし
自転をし
増殖を繰り返す
一方で
普遍性を保ち泰然とするものもある

そんな無数の波の上で浮沈を繰り返し漂うように生きてきたひとつのステージが幕を下ろし
新しくなり再び幕を開けようとしている

夕暮れの公衆電話ボックス

平成28年11月27日福島礼子さんカフェ日和(朝日)
平成28年11月27日福島礼子さんカフェ日和(朝日)

私が書き出して素晴らしい文章を濁してしまってはいけない
と思いながらも少し自分に言い聞かせるように言葉だけを

💚

銭湯にかよった時代の回想
風呂上がりに公衆電話ボックスから故郷に電話をする女性
念願が叶いそうだと親に報告している
洗面器を抱かえながら電話の順番を待つ
彼女の話を聞きつつ後ろ姿を眺めている
遠い昔の夕暮れ時の話

💚

福島さんは少しだけ歳上です
でも時代は同じと考えていいでしょう

まだまだ社会は未完成で
経済成長もこれからという時代だった

大学に進学することや
都会に働きに出ること
もっと言えば
企業というところに勤めに出ることなどにも
手探りの時代だったわけです

一人で都会にいる責任の重さのようなものを背負い
未来にかけた大きな夢を抱きながら
時には孤独と闘い
時には羽ばたく自分の姿を大きく描き

一生懸命に生きていた

したたかな若者がそこらじゅうにいて
みんなが目に見えないもので繋がり
守られて未来に向かって歩んでいた

現代の若者にはわかってもらえない歯がゆさと
そんな幸せに守られるような社会にこれまでを導いてきたという自負と
目に見えないこの先の不安を胸に

静かに回想をする大きな頷きのようなものを感じます