満月や今年最後のご挨拶
そう書いて十二月の十五夜を送って以来とんとんとんと日々は過ぎまもなく大晦日を迎えようとしている
▼ 月日は容赦なく過ぎてゆく
今のままをとどめっておきたいという気持ち存在する傍らで物事を否応もなく忘れていってしまうという現実と闘う
過去の栄光や足跡は非常にも忘れ難きものである一方で捨て去っても惜しくないことも多々ある
忘却という生理現象は意思を持って自由にコントロールできないのが歯がゆいところで本当に忘れたいことであっても頭の片隅に忌々しく残る
にもかかわらず この複雑な気持ちを無視するかのように 時間は過ぎ去り、掛け替えのないことは次々と忘れ去られてゆく
悔しさがスパイラルで頭の中を駆け巡るが、どうしようもないことは諦めるしかない
そのような世の無常を痛切に骨身に染み込ませながら近年は十二月という暮れの時節を送る
そして毎年同じようなことを思ったり言ったりしているのがとてつもなく滑稽である
老化というひとつの生理現象は避けがたいもので分厚い壁であるのだがこの年の瀬を迎えての儀式が殊の外心地よい
何かいいことの一つや二つありますればため息も笑い飛ばしておけるのでしょうがなかなかそういうものでもないと思いながらも年末の時間を回顧に費やす
空っぽなのだ
思い出しているふりをしているけど何も考えていない
それでいいのだ
頭の中にあるのはあと五年で父が逝った年齢に到達するというどっしりと重くて静かな振動のようなものを身体のどこかが支えている
そいうことだ
誰もわかるわけがない
▼ ひとつの言葉
散々過去を振り返ってきたわけであるがやっと今頃になってひとつの言葉に到達した
あの人は可哀想な人生を過ごしたようなところもあるものの
自分勝手に過ごしたり、自分勝手にしてきたことも多いのやし
大方満足に生きてきてそんなに可哀想な人生でもなかったのではないかな
不運なときもあったけど
好き勝手なことを言うてそんなに好かれる人でもなかったけど
悪い人でもなかったので世間にもそれほど恥ずかしいこともないし
それほど大した力もないし何もできるわけでもないのに
理屈こいて大きなことばっかし言うて
まあ楽しい生きてきたんとちゃうか
多分
そんな言葉に尽きるのではなかろうか
「自伝のススメ」
を考えながら 同世代たちよ自伝をかこうではないか
と呼びかけてみたいと思い
自分の評伝ダイジェストを推測してみて思い浮かぶのがこのような言葉であった
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